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第2回 『デザイン×建築 アンフィニホームズ 吉川均の軌道』アンフィニの鉄骨建築=DAYTONA HOUSE ×LDKとの取り組み

 前回、創立30周年に向けて鉄骨構造を導入したことを話しました。今回はRC(鉄筋コンクリート)建築を得意する弊社からジャンルを少し拡げようと、新しい鉄骨の工法を導入し、設計・施工・事業計画のプラットホームを目指して、同時に工業的なデザインやアノニマスデザイン(有名デザイナーなどが関わっていないデザイン)を目指していくことを書こうと思います。

 今春、DAYTONA HOUSE×LDKと提携をしました。世田谷ベースなどを世に出したLDK設計事務所と人気雑誌“DAYTONA HOUSE”とのコラボによって誕生した工業的鉄骨造の新しい建築方式のカタチです。LGSパネルと呼ばれる単一鉄骨パーツを連結させるだけで、個人住宅はもちろんガレージハウスや賃貸住宅、店舗などさまざまな建築に対応する構造システムです。

 私はもともと「引き算する建物」をコンセプトに、華美な装飾は限りなくそぎ落としシンプルな空間を無地のキャンバスに見立て、住む方の色付けで(家具や洋服など)自分色の絵画を作りだす生活を提案しています。この構造システムの導入によって躯体をむき出しにして、躯体の空間をつくり前者がキャンバスであれば、まさに彫刻制作のような使われる方のさまざまな好みに応じた立体的な空間が可能になったと思います。

【市場の変化と建築】

 ここ数年、静岡における市場の変化には驚かされることが多くなりました。特に静岡市は人口流失に拍車をかけ、インバウンドに対する政策もほとんど見当たらず市政には期待が薄れています(まずは、ふるさと納税に力を入れたら?)。また、地銀における不正融資の結果、個人投資家に対する融資は制御され、不動産市況(土地・賃貸建築など)は大きく減速し、弊社も大きな影響を受けました。静岡市の土地の公示価は上昇ぎみで、逆に家賃は下がり続け、投資効果も振るわなくなっています。そして今回の消費増税。事業投資もなかなか難しい環境になりました。 
                          
 中心市街地もシャッターが閉まったままの店舗が増えて、店舗も居抜きを借りるというコストをかけない方法が増えています(何とも味気ない気がしますが…)。クルマを欲しがらない人たちも増えて、自分の興味のあることだけに価値と資金を投じる若者が増えています。

 そんな静岡市で誰にでも受け入れられるものを造る建築はそろそろ限界なのだと思います。住宅・賃貸・ビル・商業施設など、不特定多数の人に受けいられるものを造るのでなく、あるターゲットだけを対象とした建築に特化することが必要だと思うのです。大都市圏では容積率一杯の高層化ビルが立ち並び、空き家率も低くREIT(不動産投資信託)は高水準で運用されています。人口が経済を征するという事をまざまざと感じさせられ、地方都市との格差がますます拡がっていることを実感します。人口増加の対策はよくわからない市政に期待するのではなく、魅力ある、人の集まる街を私たちが知恵を絞って考えていく事が必要と思います。

【DAYTONA HOUSE×LDK と一緒に考える】
 
 この構造システムを使い、建築の視点から新たなビジネスやライフスタイルを造ろうとしています。新しい発想は街中だけでなく、郊外にもインバウンドにも、そして住む家は自分の趣味を満喫する。そんな考え方を少し紹介したいと思います。

1.インナーガレージのある家
 楽しむ家としてクルマ遊びの出撃基地として格納庫とホビールームを確保した家。ガレージは車やバイクの置き場に限らず、工房やアトリエなど住まう人によってさまざま。クロスに覆われた空間ではなく、鉄の素材感を前面に出した空間を演出します。趣味を大いに生かす住まい方の提案です。 ※写真①②

2.あえての平屋の家(郊外・海・山に)
 美しい平屋の感性、デザインは1950年代アメリカ西海岸のムーブメント“ミッドセンチュリースタイル”の作法を踏襲しています。周りの自然や風景を借景でなく、自分の中に取り込む発想です。傾斜地でも難なく新しい鉄骨で土台を造り、美しいプロポーションを造ります。海・山の中、そして田畑の中など、自然とミッドセンチュリーが融合した美的提案です。※写真③④

3.店舗・工場・ショウルーム
 ガラスウオールを通してスケルトンで鉄骨を見せる。工期を短縮し、考え方によっては、いろいろな店舗・薬局・診療所や床を高くしてショールームや工場に新しい工業的デザインを表現することが可能です。街の中での低層商業施設にも最適な提案です。※写真⑤⑥

4.郊外型集合住宅(インナーガレージ付き)
 最近は郊外での集合住宅を造ることが少し難しくなってきました。その理由は郊外の集合住宅はファミリー向けが大半を占めるため、多い部屋数やパーキング完備を満たす割に、家賃とのバランスや街中に住みたいという需要が増えているためです。クルマ好きやバイク好きのためのインナーガレージの付いた集合住宅は、アメリカ郊外の小さな民間飛行場の建物をモチーフに設計します。建物の前にある道路は滑走路、建物は飛行場の片隅にあるガレージという設定です。ガレージにはバイクなら3~4台、クルマなら1台+バイク1台格納可能。高級バイクやクルマを盗まれる危険がなく、仲間で1室借り上げ、2階でワイワイといったモーターライフ『積極的賃貸経営』の提案です。※写真⑦⑧

5.バイカーズホテル
 近年のキャンプ・グランピングなど、アウトドアは大変な人気です。バイクでのキャンプも大人気。バイクを1階の部屋に格納して2階に仲間同士で宿泊するバイクや車が好きのための特化したバイカーズホテルです。現在バイクが格納できるホテルはほとんど存在せず、海辺・山の中・観光地にあれば、バイカーの情報網に乗り、間違いなく人気になると確信しています。また収益性も高く、従業員もほとんど必要のない手間いらずのホテルです。※写真⑨

 以上、DAYTONA HOUSE ×LDKの構造システムを使った新しいライフスタイルについて書いてきましたが、これからの時代きちんと主張できる新しい提案をする使命があると感じます。まだまだこのシステムを使ったリノベーションや限りない計画があるのですが、いずれ紹介させていただきます。まだまだ限られた人だけにしか理解されないことがあっても恐れることなく提案を続ける事が、創立30周年を迎える“Design Architecture INFINI”の新しいスタイル=生き様になると思うのです。