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第13回 『デザイン×建築 アンフィニホームズ 吉川均の軌道』~ カーボンニュートラルへの取り組み ~

【国・県の政治に関して思う事】

 バラマキ合戦と呼ばれた衆院選が終わり、何故かポピュリズムが横行する政党ばかりになってしまったような…。エネルギー問題・国防・人口減少問題に対して緊迫感がない。県政を見れば、川勝知事の発言として絶対に許せない地域差別問題。あれだけ肩入れした議員の身にスキャンダルが露呈したとたん二度と応援しないという二枚舌。リニア問題も工事中の排出水の全量返還という物理的に不可能な事を主張し、実現可能な対案を提示しないその姿勢はいかがなものか?それに対する自民党県連は、川勝知事にようやく不信任案を提出予定と聞く。細野氏のWスコアで保守転向に賛同を得た民意をないがしろにするスタンスは、これまでの敵を許せないという議員の私的感情なのか?静岡5区や御殿場市の民意をないがしろにするのは納得がいかない。魅力のある静岡県をいつまでも二流の県に留め置き、人口減少率・日本全国ワースト3という惨状を直視して行政を執り行う必要性を感じます。

【カーボンニュートラルの取り組み】

 日本は2050年に世界120ヵ国以上と協働し、CO2排出ゼロといういばらの道を宣言しました。これはモノを生産したり、使用した時に排出されるCO2と吸収されるCO2を同量にするという国際的な取り決めで、地球気候変動問題に寄与する事を目標にしています。私たちもすべての建築現場で…とはいきませんが、現場でのCO2排出を留める努力をしなくてはなりません。

 近年、環境建築として木材が世界的に注目されています。その背景には木材の改良や工法が画期的に発達し、構造的な改良によって柱を設けなくても広い面積に対応できる事や、最大の弱点だった火災に対する改良が行われた事です。また、現場でのCO2排出が少なく、植林することでCO2が吸収できることも注目されている要因です。完成した建物の中にCO2を固定させることも可能なため、弊社もこの建築工法を応用しながらカーボンニュートラルの取り組みにチャレンジしようと考えています。広義な意味では木造建築のジャンルですが、新たな木質建材を使った建築工法のため、木造建築・鉄骨建築・RC建築に加わる次世代型の工法と考えるべきなのかもしれません(コスト的には現在のRC建築と変わりません)。

 日本には国土面積の約70%を森林が占めています。そのほとんどが戦後の復興期に植樹されたスギやヒノキ、カラマツですが、これまでの安価な外国木材の普及に伴い手付かずのままで、かえって山の荒廃を招いています。しかし近年の都市部では、SDGsやESG投資の観点から建築やオフィス空間に木材を使うことに関心が高まっており、隈研吾氏の国立競技場をはじめ、都内では大手ゼネコンが10階以上の高層木造建築を手がけています。欧米においては、劇的に進化した木造建築が資源循環型としてトレンドになり、驚くことに低層建築はRCで、高層建築は高性能木質建材を利用した建築方法になりつつあります。この画期的な木質建材と工法はCLT(cross laminated timber)と呼ばれています。

▲CLT cafe高知7

【CLT建築による都市の中に森をつくる】

 現在のCLT建材は、国産木の間伐材も利用し、板材にして交互に重ねて張り合わせることで、驚異的な強度が得られます。そのため、10階以上のビルにも活用できます(日本では何故かCLTだけでは3階以上は認可されていません。いずれ高層化も可能になると考えます。都内で造られているのは、RCや鉄骨とのハイブリッドビルです)。木は空気中のCO2を吸収して体内にとどめます。CLTが普及すると街中に中層・高層の木造建築が建つことで、CO2を吸収して森と同じ効果を果たすことが期待されます。

 この木質建材はCO2を吸収して内部に固定する事や、通常の木造に比べて4倍の木々を使うことで、循環型社会(植えて収穫し、また植える)に貢献し、CO2を吸収するサスティナブルな建材ということで、海外でも環境建築としてトレンドになっています。それ以外にもCLTには多くのメリットがあります。①RCに比べ重量が1/3のため、軟弱地盤の多い静岡では特殊基礎が軽減できる②CLTは他の工法に比べて工期がとても短く、商業店舗などは早期に開店できる③木は火に弱いが、燃えると表面が炭化して耐火被覆をつくる特性を生かして、燃焼部分の時間を計算した構造を作ることが可能になり、30分・45分・1時間の耐火基準をクリアした④中高層においても木の質感やぬくもりを感じることができ、日本古来の奥深い軒先や伝統的なデザインが再現可能(ここに私の興味がそそられる)⑤木本来の調質効果や自然なぬくもりを体感できる。

▲CLT組み上げ現場

 これらの特性を踏まえて活用方法を考えてみました。①短時間の工期と木質の香りが楽しめるため、幼稚園や学校、高齢者施設・図書館などに活用可能②重量を低減し、工期と地盤問題を軽減化する賃貸マンション。RCとハイブリッド木造を1、2階に使用することで、新しいデザインの5階建建築が可能③ひさしを伸ばし、木をふんだんに使用した新しいデザインで、個性的な事務所ビルや郊外店舗を建築する④患者さんがリラックスできる雰囲気のデザインや木材の香りがする医院建築⑤大きな面積でも柱を極端に減らすことができるため、大規模アリーナや体育館に最適。

【最後に】

 今回でセカンドシーズンは最終章になります。衣・食・住といいますが、30周年を迎えた弊社でもCLTに大きな魅力と可能性を感じ、先日には高知・岡山(ここがCLTのメッカです)を訪ねて、第一人者の設計事務所とタッグを組み、プロジェクトを始動しました。大学中退後はVANの石津学校(と私は呼んでいます)で感性を磨き、独立後はアパレルの仕事で出向いたイタリアで石造り建築に目覚め、いまだその探求の旅は道半ばです。今後は日本ならではの叙情性とはかなさが感じられる木造建築がレザレクションしましたので、私なりのデザインセンスで洗練された魅力的なCLT建築をつくり上げたいと思います。

 できなかった『食』に関しても来年には私なりの軌道になるべく計画を進めています。そこに『LIFE STYLE』を加えて、青空の下でのグランピング生活の提案もビジネスとしてチャレンジしていきます。生涯で『衣・食・住』すべてのビジネスに関われたことはとても幸せな事で、静岡県内における私どもクライアントさま、ビジネスの後押しをしてくれた金融機関、そして連載原稿を提案してくれたビジネスレポートの担当者のお陰と感謝します。

 またいつか、皆さまとお会いできる日を楽しみに…。